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バドミントンクラブの設立に向けて、部活動の地域移行の現状と課題
中学校の先生やクラブの指導者の方々は部活動の地域移行については聞いたことがあるかと思います。すでに地域でバドミントンクラブを設立して、部活動の代わりに動いているクラブもあります。
ただ「部活動の地域移行っていつから始まるの?」「バドミントンクラブって誰でも作れるの?」と、疑問に感じている方も多いと思います。令和5年度の段階で部活動の地域移行は始まっています。また、元々ジュニアクラブから活動していたチームがバドミントンクラブとして、すでに活躍しているクラブも多いです。
ただし、公的な大会にバドミントンクラブとして出場する場合は中総体までと決められているところもあります。これでは地域のバドミントンクラブで出場する生徒も少ないのが現状です。ここでは中学校の部活動が地域移行している経緯と現状、そして諸々の課題について説明し、実際にバドミントンクラブの設立方法について紹介していきます。
バドミントンクラブ設立の実際については別ページにて紹介していますので、そちらをご覧ください。
部活動の地域移行の経緯
部活動の地域移行とは、これまで中学校の先生方が担ってきた部活動の指導・大会引率などを地域のクラブチームや関係者に担ってもらい、部活動を地域の活動に位置付けることを示します。
令和4年の7月にスポーツ庁が出している「運動部活動の地域移行について」という資料を参考にすると、
- 平成30年度の段階では中学校の教職員の業務量軽減に向けた取り組みや、より専門性に特化した指導者が部活動を指導することの意義が唱えられました。
- 令和3年度では休日の部活動は地域に依頼する動きがいくつかの都道府県で実践研究として行われます。バドミントンは富山県が実践研究の対象でした。
- 令和4年度の段階で運動部活動の地域移行に向けて目指す姿が提案されました。
①少子化の中でも、将来にわたり我が国の子供たちがスポーツに継続して 親しむことができる機会を確保。
②スポーツは、自発的な参画を通して「楽しさ」「喜び」を感じることに本質。 自己実現、活力ある社会と絆の強い社会創り。 部活動の意義の継承・発展、新しい価値の創出。
③地域の持続可能で多様なスポーツ環境を一体的に整備し、子供たちの 多様な体験機会を確保。
このように行政で指針が示されたのちに、休日の運動部活動から段階的に地域移行していくことが定まりました。
- 令和5年度段階では実際にクラブ活動として登録したチームが中総体の全国大会でも出場しています。しかし、地域によって、新人戦はバドミントンクラブの参加を認めないところもあり、中学の部活動(郊外活動部も含む)に所属している生徒のみの参加に限られました。
- このような制限もあり、「学校の部活に所属した方が良いのか、バドミントンクラブに所属した方が良いのかわからない」という声が多く聞かれるようになりました。
- ところが、令和6年度には新人戦もバドミントンクラブで出場可能となるため、年度初めからバドミントンクラブに所属する生徒が増えることが予想されています。
- ここまでの動向を踏まえ、令和8年度には令和5年から7年までの取り組みを振り返り、今後の活動について検討するとのこと。
大会の参加区分について
大会の参加は従来、生徒が所属する中学校名で登録し、大会に出場するというのが一般的でした。現在もほとんどが所属する中学校から出ています。
しかし、これからは運動部の地域移行が進むにつれて、新しくクラブ活動での参加が認められるようになります。
令和5年11月に日本中学校体育連盟が示した以下の五つの参加方法の区分を説明します。
区分A | 学校の部活動のみに所属し,学校部活動名で中体連主催大会参加を希望する |
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区分B | 学校の部活動と地域クラブ活動に所属し,学校部活動名で中体連主催大会参加を希望する |
区分C | 学校の部活動と地域クラブ活動に所属し,地域クラブ活動名で中体連主催大会参加を希望する |
区分D | 地域クラブ活動のみに所属し,地域クラブ活動名で中体連主催大会参加を希望する |
区分E | 大会参加を希望しない |
従来は区分Aと区分Bでの大会参加が主でした。
区分Bの段階でも部活動の地域移行が進んでいる状況でしたが、地域のバドミントンクラブが主として活動できるように区分Cと区分Dが設けられるようになりました。
これからは区分Cと区分Dでの参加選手が増えそうですね。
ただ、一つ問題があり、年度内での区分変更はできません。
例えば、年度の初めに「区分A」で登録し、中総体が終わってから「区分C」または「区分D」に変えるということができないということです(その反対も同様)。
上記のどの区分で参加するかは年度の初めに生徒と保護者が話し合い、既定の登録用紙に記入の上、学校またはバドミントンクラブの責任者に提出します※。
どの区分で参加するかは事前に学校の先生やクラブの指導者とも十分に話し合ってから決めてください。
重複で登録している場合は、大会の参加自体ができなくなりますので、ご注意ください。
※実際の手続きは各県によって異なる可能性があります。
バドミントンクラブとして認められるために
令和6年度から多くの大会はバドミントンクラブでの出場が可能となります。
しかし、地域のバドミントンクラブは事前にクラブ活動としての登録が必要です。
登録先は各都道府県の中学校体育連盟やバドミントン協会で、この手続きは毎年行います。
また、クラブ活動の登録には審査もあり、この審査を通らないとバドミントンクラブとして大会に出ることはできません。
実際にバドミントンクラブを作る手続きは以下の通りです。
①バドミントンクラブの構成員の確保
構成員は代表者、事務担当者、指導者(審判員資格3級以上取得していること)、所属中学生から成る。
代表者と事務担当者、所属中学生は他のバドミントンクラブとの重複登録は不可。
指導者は他クラブとの重複登録が可能。
所属中学生以外は成人していること(20歳以上)。
令和7年度末までにコーチ資格を取得している者を1名は確保すること。
②活動場所・時間の確保
明記されてはいませんが、団体登録用紙に記入する欄があることが多いです。
③各都道府県の中学体育連盟にクラブ活動の登録
申請用紙を各都道府県の中学体育連盟から取り寄せる(ダウンロード)。
申請用紙に必要事項を記入の上、期限までに申し込む。
中学体育連盟によっては「大会参加に係る誓約書」や「団体規約」、「団体員名簿」などが必要なところもありますので、各都道府県の連盟に確認すること。
④中学体育連盟から審査結果通知
審査の結果、団体の登録が認められれば、大会に参加する権利を有します。しかし、手続きは終わりではありません。
⑤各都道府県のバドミントン協会に登録
地域クラブ活動の構成員は、日本バドミントン協会・都道府県協会会員登録及び会費を支払います。
⑥各会議への参加・大会運営の協力
クラブ活動として認められた後に、クラブの代表者は会議や大会運営に協力することを必須としている地域もあります。きちんと各都道府県の取り組み状況をご確認ください。
以上の6つをクリアすれば、バドミントンクラブとして認められ、大会参加が可能となります。その他にも条件がある地域もありますので、より詳細はお住まいの都道府県の中学校体育連盟にお問い合わせください。
部活動の地域移行の課題ーバドミントンクラブの質の担保
部活動が地域移行することを国が進めていますが、実際に活動しているバドミントンクラブの実態はわかりません。
ネットの記事では部活動の地域移行が進むにつれて、「選手の取り合いが始まる」と議論になっています。
しかし、それ以前にバドミントンクラブが生徒をしっかり指導できる環境や指導者がそろっているのか疑問です。
課題1 クラブの指導者が中学生を指導できるのか?
バドミントンクラブの指導者が所属中学生を指導できる資質があるか不透明。
近年は、色々なハラスメントが挙げられており、暴言・暴力だけでなく、相手への態度も非常に気を使わなければなりません。
そのため、実力のある優秀な選手がコーチとなっても、指導する立場として優れているかはわかりません。
学校の先生方は教員免許を取得するために、「生徒指導」や「学習」といった、生徒への関わり方や物事の教え方について学んできた方々です。
顧問としてスポーツに関しては無知でも、「指導」や「教える」ということに関してはプロです。言葉がけ一つにしても効果的な方法を知っています。
地域の指導者が指導者としての資質があるかどうかは、長期的に見ていかないとわからないこともあります。
少なくとも、バドミントン競技に関しての指導者は「日本バドミントン協会公認審判員資格(3級以上)を取得していること」とし日本中学校体育連盟バドミントン競技部『地域クラブ活動の参加細則』には記載されています。
またそれだけでなく、令和7年度末までに日本スポーツ協会公認スポーツ指導者(バドミントン)資格所持者が最低1名は所属していること(令和8年度からは、必ず資格所持者が最低1名は所属していること)としています。
クラブとしての質、そしてコーチとしての質を担保する意味で資格取得を進めています。
クラブの指導者が中学生を指導できるのかは地域の皆様からの意見も大切です。コーチの態度などで気になることがあれば、体育連盟に意見を出すことも必要かもしれません。
課題2 少子化が進む中で生徒はあつまるのか?
少子化は年々進んでおり、中学生の参加者数は徐々に減ってきています。
バドミントン競技にかかわらず、どの競技でも構成員が足りずに、部活動として成り立たない競技も増えてきています。
学校側の対策としては、様々な学校同士でチームを組むといったところもあります。
バドミントンも中学生の数は年々減っている印象ですが、バドミントン人口は少しずつ増えています。
バドミントンは初心者からでも始めやすく、大人になってから始める方も多いスポーツです。
少子化が進む中で、子どもだけにフォーカスして「バドミントンやりませんか?」と声をかけるのは今の時代には合わないかもしれません。
まずは親に声をかけて、親からバドミントンを始めてもらい子どもに興味をもってもらうという機会を作るのも一つかもしれません。
これは中学校の教員の方には難しいことですが、地域のクラブの方々であればできばやりやすい方法かもしれません。
地域地域の状況に合わせて、バドミントンの競技人口を増やしていければと考えます。
まとめ
- 運動部活動の地域移行は教職員の負担軽減、専門性のある指導者が指導を行う、地域単位でスポーツを支えることを目的としています。
- 大会の参加は学校からだけでなく、地域のバドミントンクラブからでも参加が可能となります。
- バドミントンクラブで参加するためには、バドミントンクラブの事前登録が必要です。
- バドミントンクラブの質を担保するためにも指導者は「日本バドミントン協会公認審判員資格(3級以上)」や「日本スポーツ協会公認スポーツ指導者(バドミントン)」の資格が必要です。
小中高生にバドミントンの楽しさを広めるためやバドミントンの技術向上に向けて、ぜひ地域の方々も参加してください!
バドミントンクラブの実際の登録については別の記事で説明しています。